テニス肘でも腕立て伏せや懸垂はできる?痛くないフォームと対策

こんにちは。ラケットトラベルです。
トレーニングを続けたいけれど肘の外側がズキズキ痛む、休むべきかフォームを変えるべきか悩んでいる……そんな経験はありませんか?実は私自身も、テニスと筋トレを並行して行っていた時期に、ペットボトルのキャップを開けるのさえ辛いほどの痛みに悩まされたことがあります。
「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」という名前ですが、これはテニスプレイヤーだけの専売特許ではありません。デスクワークでのキーボード操作や、そして何より腕立て伏せや懸垂といった「手首を固定して力を入れる」トレーニングで発症するケースが非常に多いのです。
痛みや違和感の理由を「ただの使いすぎかな?」と放置したままトレーニングを続けてしまうと、炎症が慢性化し、腱の組織が変性して治りにくい状態になってしまうこともあります。しかし、解剖学的な痛みのメカニズムを正しく理解し、ほんの少しギアやフォームを工夫するだけで、驚くほど負担を減らせることも事実なんです。
この記事では、私の実体験と徹底的なリサーチに基づき、痛みを回避しながら上半身を強化するための具体的なメソッド、そして回復を早めるためのケア方法まで、出し惜しみなくシェアしていきます。
- テニス肘で腕立て伏せや懸垂が痛む解剖学的な「本当の理由」
- 手首の負担を劇的に減らすプッシュアップバーやグリップの活用法
- 痛みが強い急性期に取り組むべき代替トレーニング種目リスト
- 効果的なサポーターの選び方と、一人で巻けるテーピング手順
テニス肘の原因となる腕立て伏せや懸垂のフォーム
「なぜ筋トレをすると肘の外側が痛むのか」。その答えを探るには、肘そのものではなく、手首の使い方や前腕の骨の構造に目を向ける必要があります。ここでは、なぜ従来のフォームが肘を痛めつけるのか、そしてどうすればそれを回避できるのか、解剖学的な視点から深掘りして解説します。
痛みの理由は手首の角度と解剖学的構造にある
まず、私たちが「テニス肘」と呼んでいる症状の正体について少し詳しく見ていきましょう。正式名称は「上腕骨外側上顆炎」と言いますが、近年のスポーツ医学では、単なる炎症(-itis)だけでなく、腱の組織が微細な断裂を繰り返して弱くなってしまう「腱症(-osis)」の側面が強いとも言われています。
この痛みの主犯格となるのが、前腕にある「短橈側手根伸筋(ECRB)」という筋肉です。

この筋肉は、手首を手の甲側に反らす(背屈させる)動きや、強く拳を握り込む際に手首が負けないように固定する役割を担っています。
ここで、一般的な「床に手をつく腕立て伏せ」を想像してみてください。手のひらを床にベタッとつけると、手首は強制的に90度近く反り返った状態(過伸展)になりますよね。

実は、この「手首を深く反らした状態」こそが、ECRBにとって最も過酷なポジションなのです。筋肉と腱が引き伸ばされ、ピンと張った状態で体重という高負荷がかかると、その張力はすべて肘の外側にある骨の付け根(起始部)に集中します。さらに肘を曲げ伸ばしすることで、骨と筋肉の間で摩擦や圧迫が起き、傷んだ組織にトドメを刺すようなストレスがかかってしまうのです。「トレーニング中はずっと肘の付け根が引っ張られている」と考えてみると、痛くて当然だと思いませんか?
ここがポイント
痛みが出るのは「筋力が足りないから」ではありません。構造上、「手首を反らして体重を支える」という動作そのものが、テニス肘の患部に直接的なダメージを与えているのです。まずはこのメカニズムを理解することが、改善への第一歩です。
負担を減らすプッシュアップバーの正しい使い方
前述の通り、痛みの最大の原因は「手首の背屈(反り返り)」にあります。では、どうすればこれを回避できるのか。私が試した中で最も即効性があり、効果を実感できたのが「プッシュアップバー」の導入です。
「道具を使うなんて大げさかな?」と思うかもしれませんが、テニス肘のトレーニーにとって、これは単なる筋トレ器具ではなく、もはや「保護具」です。バーを握ることで、手首の角度は床に対して垂直に近い「ニュートラルポジション(中間位)」に保たれます。拳を立てて行う「ナックルプッシュアップ」と同じ状態ですが、バーの方が安定感があり、手への痛みもありません。
このフォームの最大のメリットは、ECRB(短橈側手根伸筋)への伸張ストレスが解放されることです。手首を反らさなくて済むため、腱が引っ張られることなく、純粋に大胸筋や上腕三頭筋に負荷を集中させることができます。
【効果的な使い方のコツ】
ただ握れば良いというわけではありません。ポイントは、「バーを強く握り込みすぎないこと」です。強く握ると、前腕の筋肉が収縮してしまい、結局肘に負担がかかります。指でギュッと握るのではなく、手のひらの付け根(掌底部分)をバーに乗せ、骨で体重を支えるようなイメージで行ってみてください。これにより、前腕の筋肉をリラックスさせたままプレス動作を行うことができ、肘へのダメージを最小限に抑えられます。
フォーム改善で変わる手首と肘への負担軽減策

プッシュアップバーがない場合や、バーを使っていても痛みを感じる場合は、身体の使い方(フォーム)そのものに問題があるかもしれません。特に見直してほしいのが、「手幅(スタンス)」と「脇の角度」です。
胸板を厚くしたい一心で、肩幅よりも大きく手を開く「ワイドスタンス」で行っていませんか?確かに大胸筋へのストレッチ効果は高いのですが、テニス肘にとってはリスクの高いフォームです。手幅を広げると、身体を下ろした際に肘が外側に張り出しやすくなります。すると、肘関節に対して外側から内側へねじれるような力(外反ストレス)がかかり、内側の靭帯だけでなく、外側の関節面にも強い圧迫力が加わります。
テニス肘の人が目指すべきは、「ナロー(狭め)〜ミディアムスタンス」です。具体的には、以下の手順でフォームを修正してみてください。
- 手幅は肩幅と同じか、握りこぶし一つ分広いくらいに設定します。
- 身体を下ろす際、脇を45度〜60度程度に締めます。
- 肘を外に張るのではなく、体幹(脇腹)に沿わせて後ろに引くようなイメージで動作します。
このフォームにすると、負荷の一部が大胸筋から「上腕三頭筋(二の腕)」に分散されます。これにより、肘関節へのねじれ負荷が軽減され、より安全にプッシュ動作を行うことができるようになります。最初は窮屈に感じるかもしれませんが、関節を守るためには非常に重要なテクニックです。
注意点
フォームを変えても痛みがある場合は、決して無理をしないでください。回数をこなすことよりも、「痛くない可動域(レンジ)」を探ることが先決です。深く下ろすと痛いなら、浅い可動域で止めても十分なトレーニング効果は得られます。
懸垂で痛くないグリップは順手よりパラレル
次は「懸垂(チンニング)」についてです。「引く動作なのに、なぜ肘の外側が痛くなるの?」と不思議に思う方も多いでしょう。実はこれ、前腕の骨の構造とグリップの関係が深く関わっています。
一般的に行われる「順手(プロネーション・グリップ)」は、手の甲を自分の方に向けてバーを握ります。この時、前腕の中にある2本の骨(橈骨と尺骨)は、X字状にクロスしてねじれた状態になっています。この「ねじれ」が生じている状態で強い握力を発揮しようとすると、骨に付着している筋肉(伸筋群)の走行距離が伸び、ピンと張った状態になります。
この状態で全体重を引き上げると、ECRBを含む伸筋群に強烈なテンションがかかり続け、肘の外側の腱付着部をグイグイと引っ張ってしまうのです。これが懸垂でテニス肘が悪化するメカニズムです。
そこでおすすめしたいのが、手のひらが互いに向かい合う「パラレルグリップ(ニュートラルグリップ)」です。

この持ち方だと、前腕の2本の骨が平行に近い状態になり、ねじれが解消されます。筋肉や骨間膜の緊張が緩むため、肘への負担を劇的に減らすことができるのです。
もし通っているジムのチンニングスタンドにパラレル用のハンドルがない場合は、アタッチメントの「Vバー」をストレートバーに引っ掛けて行う方法も有効です。まずは「順手をやめること」、これが懸垂による痛みを回避する最短ルートです。
懸垂の手首角度を調整して負担を回避するコツ
グリップの種類を変えるだけでなく、バーを握る時の「手首の角度」も非常に重要です。懸垂で身体を引き上げる際、無意識のうちに手首を内側に巻き込むように(掌屈させて)力を入れていませんか?
手首を巻き込んで引くと、動作のトップポジション(顎がバーを超えたあたり)で手首が返る動きが生じやすく、その瞬間に伸筋群へ急激な衝撃が走ることがあります。
ここでの解決策は、「握力への依存度を下げること」です。具体的には、「リストストラップ」や「パワーグリップ」といったギアを積極的に活用しましょう。

「握力を鍛えるのもトレーニングのうち」という意見もありますが、テニス肘を治す期間中は、握力トレーニングは一旦切り離して考えるべきです。
リストストラップを使って手首とバーを固定してしまえば、指で強く握らなくても、手首や肘で体重を支えられるようになります。これにより、前腕の筋肉をリラックスさせた状態(脱力した状態)で、背中の筋肉(広背筋)だけを使って身体を引き上げることが可能になります。ECRBが「手首を固定する」という仕事を休めるため、患部への負担はほぼゼロに近づきます。
ちょっとしたコツ
ストラップがない場合の応急処置として、あえて手首を少し反らせ気味(背屈)にして、親指側を伸ばすようなイメージでバーに引っ掛ける「コックさせる」持ち方があります。伸筋腱があらかじめ短縮位になるため、引き伸ばされるストレスを防げる場合がありますが、個人差があるため、痛くないか確認しながら慎重に試してみてください。
テニス肘対策としての腕立て伏せや懸垂の代替種目
痛みがピークに達している「急性期」には、どんなにフォームを工夫しても痛いものは痛いです。そんな時は、勇気を持って種目を切り替えましょう。トレーニングを休むのではなく、「肘に負担をかけない種目」を選んで筋肉を維持・強化することこそが、賢いトレーニーの選択です。
痛みが強い時期におすすめの代わりの筋トレ
「床に手をつくのが痛い」「ぶら下がるのが辛い」という時期は、関節の角度を自由に調整できるダンベルや、軌道が安定しているマシンを活用するのがベストです。

フリーウェイトのバーベルや床での自重トレーニングは、手首の角度が固定されがちなので、この時期は避けた方が無難です。
【保存版】テニス肘に優しい代替トレーニング種目リスト
| 部位 | 代替種目 | 推奨理由とポイント |
|---|---|---|
| 胸 (プッシュ系) | ダンベルプレス (ニュートラルグリップ) | ダンベルを縦(手のひらが向かい合う状態)に持ってプレスします。手首を反らさず、肘を閉じた状態で動作できるため、橈側伸筋へのストレスが最小限になります。 |
| 胸 (プッシュ系) | ダンベルフライ マシンペックフライ | プレス動作と違い、肘関節の曲げ伸ばしがほとんど関与しません。肘の角度を一定に保ったまま肩関節だけで動作するため、肘への負担を回避しながら大胸筋を刺激できます。 |
| 背中 (プル系) | ラットプルダウン (パラレルグリップ) | 懸垂と同じ筋肉を使いますが、体重以下の負荷に調整できる点が決定的です。パラレルグリップのアタッチメント(マググリップなど)を使えば、手首への負担も軽減できます。 |
| 背中 (プル系) | チューブローイング シーテッドロー | 柱にチューブをくくりつけて引く、またはマシンで引く動作です。身体が固定されているため、フォームが崩れにくく、純粋に背中の収縮に集中できます。リハビリ期の筋力維持に最適です。 |
特にダンベルプレスをニュートラルグリップで行う方法は、通常のベンチプレスで痛みが出る人でも「これならできる!」となるケースが多い優秀な種目です。可動域も広くとれるので、怪我の功名で大胸筋の成長につながることもありますよ。
おすすめのサポーターで筋トレ時の患部を保護
トレーニングを再開する際、あるいは日常生活での負担を減らすために、サポーターは強力な武器になります。しかし、選び方を間違えると効果が半減してしまいます。
テニス肘用として最も推奨されるのは、肘全体を覆うスリーブタイプではなく、「エルボーバンド(テニス肘バンド)」と呼ばれる、ピンポイントで圧迫できるタイプです。
【正しい装着位置】
痛い部分(骨の出っ張り)の上に巻いてはいけません。痛い部分から指2〜3本分ほど手首側に下がった、「前腕の筋肉が一番盛り上がっている部分(筋腹)」に巻きます。

【なぜ効くのか?】
ここにバンドを巻いて圧迫することで、手首を動かした時に発生する筋肉の収縮パワーがバンドの部分で止められ、腱の付着部(痛いところ)まで伝わらなくなります。これを「アンカー効果」と呼びます。言わば、バンドが「第二の筋肉の付着部」のような役割を果たしてくれるのです。
有名ブランドであれば、医療用サポーターの実績がある「ザムスト(ZAMST)」や、ドイツの医療機器メーカーである「バウアーファインド(Bauerfeind)」などが信頼性が高くおすすめです。特にザムストの「エルボーバンド」はクッションパッドが付いており、的確に圧迫できるため、多くのトレーニーやアスリートに愛用されています。
自分で巻けるテーピングの巻き方と効果的な手順
「サポーターだとかさばる」「試合や本番ではもっと自然な感覚が欲しい」という場合は、キネシオロジーテープ(伸縮性のあるテープ)を使ったテーピングが有効です。薬局で売っている50mm幅のテープがあれば、自分一人でも簡単に巻くことができます。
【実践!セルフテーピングの手順】
- 準備: 50mm幅のテープを「20cm〜25cmの長さ」で2本、「15cm〜20cmの長さ」で1本カットします(角を丸く切っておくと剥がれにくいです)。
- 1本目(筋肉のサポート): 肘を伸ばし、手首を手のひら側に曲げた(掌屈)状態にします。皮膚と筋肉を伸ばした状態で貼るのがコツです。手首の甲側からスタートし、肘の外側(痛いところ)を通って、上腕(二の腕)の方へ向かって少し引っ張りながら貼ります。
- 2本目(クロスサポート): 今度は手首を少し反らせた(背屈)状態にします。1本目のテープと肘の部分で交差(クロス)するように、手首の内側から肘の外側へ向かって斜めに貼ります。これにより、肘の外側への負担を分散させます。
- 3本目(圧迫・アンカー): 最後にサポーターと同じ役割として、肘下の筋肉が一番太い部分に、バンドのように一周巻きます。血流が止まらないよう、締め付けすぎには注意してください。
このテーピングを行うことで、皮膚を持ち上げて血流を改善する効果や、筋肉の過度な収縮を抑制する効果が期待できます。
リハビリに効果的なエキセントリック運動のやり方
「痛みが引いたから治った」と思ってすぐに高重量を扱うと、高確率で再発します。再発を防ぎ、以前よりも強い腱を作るためには、医学的にもエビデンスレベルが高いとされる「エキセントリック(伸張性収縮)運動」を取り入れることを強くおすすめします。
エキセントリック運動とは、筋肉が力を発揮しながら「引き伸ばされていく」局面を強調したトレーニングです。これにより、変性してバラバラになったコラーゲン線維の配列を整え、腱の強度を高めることができます。

自宅でできるリハビリメニュー(リスト・エクステンション)
- 椅子に座り、患側の前腕をテーブルや太ももの上に乗せ、手首から先だけを外に出します。
- 1kg程度の軽いダンベル(なければ500mlのペットボトル)を持ちます。
- 【重要】 ここでは自力で上げません。痛くない方の手を使って、患側の手首を反らせた状態(トップポジション)まで持ち上げてあげます。
- 反対の手を離し、患側の手首の力だけで、重さに耐えながら「5秒〜8秒くらいかけてゆっくりと」手首を下ろしていきます。
- 一番下まで下ろしたら、また反対の手で持ち上げます。
- これを10回〜15回、3セット行います。
※動作中に軽い痛みや違和感があっても、翌日に痛みが強く残らない程度であれば続けても良いとされています(出典:日本整形外科学会『上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019(改訂2024)』)。
マッサージとストレッチで肘のケアを行う方法
最後に、日頃のケアについてです。肘が痛いと、どうしても骨の出っ張っている部分(患部)を指でグリグリと揉みほぐしたくなりますよね。でも、その行為は絶対にNGです。
炎症が起きている腱の付着部を強く刺激すると、組織がさらに傷つき、炎症が悪化してしまいます。マッサージをするなら、骨ではなく、そこにつながっている「前腕の筋肉(腕の太い部分)」を優しく揉みほぐしてください。また、筋膜でつながっている「上腕三頭筋(二の腕)」や「肩甲骨周り」の筋肉をほぐすことも、肘への負担を減らす上で非常に有効です。マッサージガンを使う場合も同様に、骨には絶対に当てず、筋肉の柔らかい部分だけに当てるようにしましょう。
ストレッチに関しては、タイミングが重要です。
- 運動前: 筋肉を緩めすぎると力が出にくくなるため、手首をクルクル回すなどの「動的ストレッチ」を中心に。
- 運動後・お風呂上がり: 肘をしっかり伸ばし、手首を手のひら側に曲げて、前腕の伸筋群を30秒ほどじっくり伸ばす「静的ストレッチ」を入念に行いましょう。
まとめ:テニス肘でも腕立て伏せや懸垂は継続可能

テニス肘になってしまったからといって、大好きな筋トレを完全に諦める必要はありません。もちろん、激痛がある時は安静が第一ですが、ある程度落ち着いてきたら、「痛くないやり方」で動かしていくことが回復への近道になります。
大切なのは、「手首を反らさない工夫」と「握力に頼らない工夫」です。プッシュアップバーやリストストラップ、エルボーバンドといった便利なギアを味方につけ、ナロープッシュアップやパラレルグリップ懸垂といった負担の少ないフォームを選択しましょう。そして、地味ですがエキセントリック運動のようなリハビリを継続することで、怪我をする前よりも強く、タフな肘を手に入れることができるはずです。
焦りは禁物です。自分の身体の声に耳を傾けながら、賢くトレーニングライフを楽しんでいきましょう!
免責事項
本記事の情報は一般的なリサーチおよび個人の経験に基づいたものであり、医学的な診断や治療に代わるものではありません。痛みが激しい場合、痺れがある場合、または長期間症状が改善しない場合は、無理にトレーニングを続けず、必ず整形外科などの専門医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。

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